台湾的日々漢方

エリさんは台北で、
漢方薬局を営むご両親のもとに
生まれました。
台湾の大学で音楽科を卒業し
アメリカでクラリネット奏者として
活動した後、日本の大学院へ。
卒業後、漢方ブランド「DAYLILY」を
起ち上げ、おしゃれでかわいい、
気持ちも体調も上がるような
漢方ライフを提案しています。

「台湾での漢方の存在感や立ち位置は、
日本でのそれとは少し違います」
とエリさん。
曰く、台湾での漢方は、
「もっと身近で、普段の生活にあるもの」
なんだそうです。
普段の生活に漢方があるって、
毎日漢方薬を飲んでるってこと…?
と思ったら、そうではない様子。
台湾の人たちは、漢方の知識や考え方を
普段の生活に取り入れて、
自分の体と上手に
お付き合いしているようなのです。

そんな台湾の人たちの生活について
エリさんが書いてくれることになりました。
漢方のこと、台湾の人たちのこと、
わたしたちの体のこと、
みなさんと一緒に
楽しみながら知っていきたいです。
不定期連載、編集担当は深谷です。


プロフィールサンプル画像
王怡婷(ワン・イーティン)

通称エリさん。
台湾の台北市にある漢方薬局に生まれ育つ。国立台湾師範大学音楽学科修了後、ニューヨークでクラリネット奏者として活動。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程を修了。卒業後、大学院時代の先輩である小林百恵(こばやしもえ)さんと一緒に、漢方のライフスタイルブランド「DAYLILY」を起ち上げ、アジアの女の子たちの体温と気分をあげるべく活動している。
DAYLILYのウェブサイトはこちら


2.母の四神湯

 
旧正月の二日目、うちの食卓には
いつも「四神湯(しせんたん)」があります。
 
 
四神湯は、四種類の生薬が入ったスープ。
やまいもを乾燥させた「淮山(わいさん)」、
鬼蓮(オニバス)の成熟した種子の
仁を乾燥させた「芡実(けんじつ)」、
蓮の実である「蓮子(れんし)」、
そして、松の根に寄生する
マツホドというキノコの菌核を
乾燥させた「茯苓(ぶくりょう)」です。
他の生薬を使うレシピもあるけれど
うちで使うのは、基本的にこの四種類。
これらの生薬は全て食べられるので、
具だくさんな四神湯を食べれば
それだけでお腹はいっぱいです。
 
 
台湾の人たちは
少し疲れたな、という時や
あまり食欲がない時に四神湯を食べます。
四神湯には、胃や腸の働きを
良くする効果があり、
食べるとお腹から元気が出てくるのです。
また、体のだるさや口の渇き、
むくみの原因となる
体内の余分な水分を出す効果もあり、
体と心を軽くしてくれます。
 
 
この四神湯は、わたしの母の得意料理。
いつも、父の店の生薬を使ってつくります。
旧正月の初日にご馳走を食べて疲れた胃に、
四神湯は優しい。
旧正月二日目の四神湯には、
「みんなが気持ちよく食べられるように」
という、わたしの母の想いがあります。
 
 
と、ここまで、四神湯について
たくさん紹介してきましたが、
一体、どんな感じの食べものでしょう。
 
 
実は、四神湯の見た目は
ちょっと怖いです。
なので、日本の友人に紹介する時は
いつも少し緊張します。
 
 
これが四神湯です。
 
 
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白いスープに、生薬と豚の内臓が
入っています。
台湾で使う豚の内臓は
日本のものよりも生々しいので、
初めて四神湯を見た人は
びっくりするかもしれません。
 
 
でも、安心してください。
四神湯はとてもおいしいです。
四神湯を食べたわたしの日本の友人たちは
みんなハマりました。
薄い塩味で、ほのかに
生薬とお肉の香りが感じられます。
 
 
わたしと一緒に
漢方ブランド「DAYLILY」を
起ち上げたもえさんも、四神湯が大好き。
台湾へ出張に行くと
二日に一回は四神湯を食べています。
 
 
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四神湯がおいしい理由がもう一つ。
それは、一緒に食べる
「刈包(グゥアーボォー)」です。
 
 
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刈包は、ハンバーガーのような食べ物で、
台湾の人たちは
よく四神湯と刈包を一緒に食べます。
肉まんのような生地に
じっくり煮込んだ豚肉をはさみ
ピーナッツ粉で味つけ。
お好みでパクチーも入れられるので、
一口で様々な味を楽しむことができます。
日本ではピーナッツ粉を使うことが
あまりないと思うので、
台湾で刈包のお店を見つけたら
ぜひ、その絶妙な味を試してみてください。
とてもおいしいです。
 
 
台湾の人たちは、夜市や食堂で
四神湯を食べることが多いですが、
わたしの母のように
おうちでつくることもできます。
漢方屋さんへ行って必要な生薬を買い、
豚肉や豚の内臓と一緒にお鍋に入れて
煮込んだら完成です。
 
 
わたしはまだ、日本で四神湯づくりに
挑戦したことはないけれど、
この文章を書いていて
挑戦したくなりました。
今度台湾へ帰るときに、
四神湯の具材を持ってきて
チャレンジするので、成功したら
四神湯のつくり方について書きますね。
  
 
 
 
 
  
わたしの実家から近く、
ついつい行ってしまう四神湯専門店
老翁家四神湯
台北市新東街29號
+886 2 8787 4078
12:00~21:30
https://www.facebook.com/laowongjia/

 
 
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