プイファイさんの水彩日記

タイのバンコクで生まれ育ったプイファイさんは、
子供のころに水彩画を習っていました。
そのころから、何かおもしろいものや
心ひかれるものに出会ったとき、
感じたことや考えたことについて、
水彩で絵日記を描いています。

その絵日記がとても素敵だったので、
TSUMUGIで連載してもらうことにしました。
丁寧に描かれる水彩画と、
素直に綴られるプイファイさんの言葉を
どうぞお楽しみください。
不定期連載、編集・翻訳担当は深谷です。

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Napawadee Rodjanathum(ナパワディー・ロッジャナタム)

通称プイファイさん。
タイのバンコク生まれ。チュラーロンコーン大学インダストリアルデザイン学科を卒業後、イタリアのミラノ工科大学にてストラテジックデザインの修士号を取得。現在は、カセサート大学で講師を務め、プロダクトデザインとイノベーションについて教える他、週末には水彩画のワークショップを開催している。
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4.2匹のこと

 
 
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一年ほど前、ボーイフレンドの
おばあさんの家で見つけたのは、
5匹の子猫と、そのお母さん猫でした。
 
 
まだ生後1か月ほどで
とても小さな子猫たち。
そのかわいらしい姿に
わたしは不意に恋に落ち、
そのうちの2匹を連れて帰ったのでした。
 
 
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姉とわたしは、この子猫たちを
カノム・クロックとカノム・カイと
名づけました。
 
 
「カノム」というのは
タイ語で軽食やお菓子を意味する言葉。
2匹の毛の色が、それぞれ
カノム・クロックとカノム・カイという
お菓子によく似ていたことから
名づけました。
 
 
実は、わたしの名前「プイファイ」も
カノムの一つ。
わたしは、自分の名前とおそろいの2匹の名前が
とても気に入っています。
 
 
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2匹との暮らしは
穏やかで心地よいものです。
 
 
猫という生き物は
自分で自分の世話ができ、
人からかまわれ過ぎるのは
苦手なように思います。
なので、わたしと2匹も
一緒に遊んだり、抱っこしたりして
過ごす時もあれば、
互いにかまわず、それぞれの世界で
過ごす時もあります。
 
 
こう書くと、なんだか寂しく
思われるかもしれませんが、
互いが周りにいるというだけで
十分うれしいものです。
 
 
そして、2匹との暮らしは、
わたしに、たくさんの学びをくれます。
 
 
例えば、いつも好奇心を忘れないこと。
そこに興味をひくようなものが
何もない時でさえ、
2匹は好奇心でいっぱいです。
 
 
また例えば、日々の小さなことを
楽しむこと。
高価なおもちゃなんか無くても、
2匹は木の葉一枚で十分楽しそう。
 
 
そして、自分の想いや感情を
自由に表現すること。
抱っこしてほしい時は
のどをゴロゴロ鳴らすし、
一人で過ごしたい時は、
わたしに呼ばれても完全無視です。
 
 
こんな風に、一瞬一瞬を生きることを
よく理解している様子の2匹。
そんな彼らのことが、
わたしは少しうらやましいのです。
 
 
写真サンプル
 
 
賢くて、遊ぶのが好きで、
人と過ごすのが大好きな2匹。
この子たちがやってきたことで、
我が家はにぎやかになりました。
 
 
母が庭仕事をすれば、
2匹はその周りで遊んだり
うろちょろしたり。
母は、一緒に庭仕事をする
友達ができてうれしそうです。
 
 
また、父が車の修理をすれば、
2匹はその邪魔をしてばかり。
特にカノム・クロックは
エンジンルームの探検が好きで、
探検後、灰色に変身した姿は
いつもわたしを笑わせてくれます。
 
 
こんな2匹のおかげで、我が家には
時に笑い声があふれ、
時に、めちゃくちゃになった部屋を
見つけた人の叫び声が響きます。
 
 
かつてよりも騒々しくなったけれど、
そんな様子を見ていると
「家」ってこういうものだよなあ、
なんて思うのです。
愛情とよろこびに満ちた
少しの騒々しさがある場所。
それが「家」なのではないでしょうか。