ジュートのお茶が生まれます

ジュートをご存知ですか。
麻の一種で、バッグやコーヒー豆を入れる袋に
使われている、と言えば
イメージできるでしょうか。

そんなジュートから、
なんとお茶が生まれようとしています。
研究開発を率いるのは
ムハンマド・マハブブル・イスラムさん。
研究者として、長年にわたって
ジュートと向き合ってきた方です。

繊維植物であるジュートから、いったい
どのようにしてお茶をつくるのでしょうか。
そもそも、ジュートって食べられるのでしょうか。
ジュートに対するマハブブルさんの
想いなどと合わせて伺ってきました。
全2回です。

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Md. Mahbubul Islam (ムハンマド・マハブブル・イスラム)

1963年、バングラデシュのダッカ管区ダッカ市ミルプール生まれ。ダッカ管区の北部、マイメンシンにあるバングラデシュ農業大学にて農学を専攻、博士号取得。専門は種子科学技術。現在は、バングラデシュジュート研究所(Bangladesh Jute Research Institute: 以下、BJRI)にて、農学部の上級研究員、部長を務め、ジュートティーの研究開発を率いる。

1.バングラデシュの宝物

マハブブルさんはいつごろからBJRIでお仕事をされているのでしょうか。

マハブブルさん
1989年からです。なので、もう30年近くになります。
学部生の時に、研究室の先生や仲間と一緒に、いろんな農学関係の仕事を見に行く機会がありまして。農業研究所やお米の研究所なんかにも行ったんですが、BJRIの研究とか、ジュートという植物そのものの素晴らしさに感動して、ここで働きたいと考えるようになりました。

ジュートそのものの素晴らしさ。

マハブブルさん
はい。ジュートっていうのは、とても環境に良い植物なんです。
栽培中は、1ヘクタールあたり14トンもの二酸化炭素を吸収して、10トンもの酸素を放出しています。
それから、ジュートを収穫した後、畑の地中にはジュートの根っこが残るんですが、それが畑の地力を高めて、土地を豊かにしてくれるんです。
あとは、刈り取られたジュートの繊維は、バッグだったり靴だったり、カーペットなんかに使われますけど、ジュートは植物性の繊維ですから、その製品は生分解性に優れています。捨てる時の環境への負荷が小さいんです。
こういう素晴らしい性質を持ったジュートをもっと活かしていくために、研究者として何かできればと思いました。
それに、ジュートの可能性を広げることで、バングラデシュや、バングラデシュの人々の役に立てるんじゃないかって。
その後、修士課程と博士課程を終えて、実際にBJRIに応募して採用してもらって、ずっとここで研究者としてやってきました。

ジュートに特化した研究所を持っている国って、めずらしいですよね。

マハブブルさん
そうですね。バングラデシュにとって、ジュート産業は昔から非常に重要なんです。
ジュートは、バングラデシュとインドの西ベンガル州で主に生産されています。農業が中心産業だったバングラデシュにとっては、輸出ができてお金をもたらしてくれるジュートは、貴重な換金作物でした。なので、私たちはジュートのことを「ゴールデンファイバー」と呼ぶんです。
今でもたくさんのジュート生産者がいますし、加工工場も、政府所有のものが24、民間のものが80で、合わせて104あります。
それに、我々バングラデシュ人にとっては、「自分たちのジュートだ」という、ジュートに対する強い思い入れがあります。欧米だとか北の国のものではなくて、自分たちのゴールデンファイバーなんだという、どこか誇らしく思うような。
だからこそ、私もジュートのために働きたいと思ったんです。

つづきます