ジュートのお茶が生まれます

ジュートをご存知ですか。
麻の一種で、バッグやコーヒー豆を入れる袋に
使われている、と言えば
イメージできるでしょうか。

そんなジュートから、
なんとお茶が生まれようとしています。
研究開発を率いるのは
ムハンマド・マハブブル・イスラムさん。
研究者として、長年にわたって
ジュートと向き合ってきた方です。

繊維植物であるジュートから、いったい
どのようにしてお茶をつくるのでしょうか。
そもそも、ジュートって食べられるのでしょうか。
ジュートに対するマハブブルさんの
想いなどと合わせて伺ってきました。
全2回です。

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Md. Mahbubul Islam (ムハンマド・マハブブル・イスラム)

1963年、バングラデシュのダッカ管区ダッカ市ミルプール生まれ。ダッカ管区の北部、マイメンシンにあるバングラデシュ農業大学にて農学を専攻、博士号取得。専門は種子科学技術。現在は、バングラデシュジュート研究所(Bangladesh Jute Research Institute: 以下、BJRI)にて、農学部の上級研究員、部長を務め、ジュートティーの研究開発を率いる。

2.食べるジュートが開く未来

ジュートというと、コーヒー豆を入れるための袋だとか、ジュートのバッグだとか、ジュート=繊維というイメージだったので、ジュートのお茶を開発していると聞いてとても驚きました。

マハブブルさん
BJRIも、もともとは繊維としてのジュートの研究のために設立されています。
でも、実はバングラデシュでは昔からジュートの葉を野菜として食べていましたし、栄養がとても豊富なことも広く知られていて、薬のような使い方もされていました。バングラデシュが建国されるよりもずっと昔、17世紀、18世紀ごろのムガル帝国の時代にも、食べ物として、薬として、ジュートが使われていたことがわかっています。

ジュートの枝の部分が繊維として使われ、葉の部分が食べられているんですね。

マハブブルさん
そういうことです。
繊維として使われるジュートは、種をまいてから120日くらいのもので、種を取る場合には、160日くらいかかります。
畑に種をまいた後、30日から45日くらい経ったころに間引きする必要があるんですが、そこで間引いた若いジュートの葉が、食べるのにちょうどいいんです。
しかも、この間引き時期の若い葉の方が、繊維として収穫されるジュートの葉よりも栄養価が高い。それを玉ねぎやにんにく、唐辛子なんかと炒めて、塩やスパイスで味付けをして食べるんです。

ジュートの葉の炒めもの、どんな味なのかとても気になります。
ジュートティーも、昔からバングラデシュで親しまれていたのでしょうか。

マハブブルさん
ジュートティーは、これから商品化して、広く親しまれたらいいな、というところです。
もともとバングラデシュは、ゴールデンファイバーの国として、ジュート製品の使途拡大や多様化を図っています。使途拡大については、例えば、コメや小麦、砂糖を入れる袋をジュート製のものにしようとか。あとは、ビニールの買い物袋をやめて、ジュート製のものを使おうとか。そういった、国をあげての取り組みがあります。ジュートの方が、ビニールより環境に優しいですしね。
こうした中で、製品の多様化に向けて、繊維だけでなく、間引きされた若い葉で何かできないかと考えました。繊維用に生産されるジュートの枝の量が、乾いた状態で、年間30万トンから35万トンくらいなんですが、その枝の栽培過程で、年間120万トンくらいの若いジュートが間引きされるんです。

120万トン!

マハブブルさん
ジュートの種はとても小さいので、一粒ずつ植えるというよりも、バーッと畑に蒔くんです。なので、間引きも多くなります。
この間引きされる葉に、ジュート製品の多様化のすごく大きな可能性があるんじゃないか。そう思ってジュートティーの開発となったんです。
そこでBJRIでは、どの種類のジュートのどの時期が栄養豊富なのか、お茶に適しているのかといった研究を担っています。

そういう背景のもとに、ジュートティーが生まれたんですね。
マハブブルさんは、ジュートに対してやご自身に対して、これからどのようなことを期待されますか。

マハブブルさん
やっぱり、ジュートのために研究者として何ができるかを考えていきたいです。生産量を上げるためにどうするか、質の高いジュートはどうすれば生産できるのかといったことはもちろん、ジュート製品の多様化に対して、どう貢献できるかが大切だと考えています。
これまでジュートは、ゴールデンファイバーとしてバングラデシュを引っ張ってきました。個人的には、その繊維としての活躍をこえてほしい、ゴールデンファイバーをこえて、ダイアモンドのようになってほしいと思っているんです。

繊維としてだけでなく、他の形でも活躍してほしい、と。

マハブブルさん
はい。実際ジュートの研究は、種から繊維へ、種から種へといったこれまでのものから、種から製品へという新しい局面に入っています。そしてこれは、私たち研究者だけでできることではありません。生産している農家の人たち、加工に関わる工場の人たち、商品化し、販売してくれる人たちと協力して、チームとして取り組むことが非常に大切なんです。
今、バングラデシュではIT分野なんかが急激に成長して、国の経済発展に大きく貢献しているんですが、ジュートにもそうなっていってほしいですね。私たちの誇りであるジュートに、もっともっと活躍してもらえるよう、素敵なチームを作りたいですし、その中で、研究者としての役割を果たしていきたいと思います。

おわります