プイファイさんの水彩日記

タイのバンコクで生まれ育ったプイファイさんは、
子供のころに水彩画を習っていました。
そのころから、何かおもしろいものや
心ひかれるものに出会ったとき、
感じたことや考えたことについて、
水彩で絵日記を描いています。

その絵日記がとても素敵だったので、
TSUMUGIで連載してもらうことにしました。
丁寧に描かれる水彩画と、
素直に綴られるプイファイさんの言葉を
どうぞお楽しみください。
不定期連載、編集・翻訳担当は深谷です。

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Napawadee Rodjanathum(ナパワディー・ロッジャナタム)

通称プイファイさん。
タイのバンコク生まれ。チュラーロンコーン大学インダストリアルデザイン学科を卒業後、イタリアのミラノ工科大学にてストラテジックデザインの修士号を取得。現在は、カセサート大学で講師を務め、プロダクトデザインとイノベーションについて教える他、週末には水彩画のワークショップを開催している。
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2.我が家の裏庭

 
 
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わたしの家は、バンコク郊外の村の
湖のほとりにあります。
そこら中に大きな木が生えている、
空気の澄んだところです。
この辺りはとても静かで、
聞こえるのは、時折通る列車の警笛や、
湖の周りを散歩したり
ジョギングしたりする人たちの声、
そして、いぬやねこの鳴き声と
鳥のさえずりくらいです。
 
 
わたしは、この家が大好き。
わたしの大好きなものの多くが
この家にあるのです。
母と父、姉とまだ幼い甥、
かわいい2匹のねこ、
わたしのベッドにピアノや本たち、
居心地のよいソファ、
大切なコーヒーマグ…
そしてもちろん、裏庭です!
座って裏庭をぼんやり眺めることは、
地球上でもっともリラックスできる
アクティビティのひとつだと思います。
 
 
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わたしは、そこまで植物の栽培に
関心があるわけではないけれど、
わたしの両親は違う。
この世の全ての植物を育てているのでは、
と思うほど、彼らは裏庭で
あらゆる植物を育てているのです。
 
 
母は、特に花が好き。
育てている花の多くはタイの在来種で、
それらのユニークな甘い香りが
裏庭をただよいます。
 
 
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母とは対照的に、父が育てるのは
果物や野菜たち。
裏庭には果物の木がたくさんあり、
マンゴー、ジャックフルーツ、ザクロ、
グァバ、そして大量のバナナが採れます。
バナナの木だけで数種類あるので、
毎日のようにバナナが収穫できるのです。
そのため、わたしたち家族だけでは
食べきれないこともしばしば。
そんな時は、ご近所の人たちに配ったり、
お菓子やデザートにしたりします。
 
 
ひと月ほど前に、父はドリアンの木を
2本植えたところ。
うまくいけば、5年後には
我が家で収穫したドリアンを
食べられるんです!
 
 
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母は、最近はあまり料理をしなくなりましたが、
もともと料理上手。
わたしが子供のころ、キッチンで
母のアシスタントをしていたことを
よく覚えています。
たくさんのレシピを教えてくれる母。
けれど、わたしは未だに
自分のことを料理上手だとは言えません。
 
 
わたしたちがつくるメニューは
いつもシンプルなもの。
そしてよく、裏庭で採れた食材を使います。
トムヤムスープに必要な材料なら、
ライムにカフィアライム、レモングラスに唐辛子、
ショウガに似たガランガルと、
ほぼ全てが裏庭でそろってしまう。
 
 
タムルンという、蔓がぐんぐん伸びる
葉野菜を使ったクリアスープも
わたしのお気に入り。
とても簡単につくれるし、なにより、
タムルンを手に入れるためには、
外へ出て、垣根を覆っている葉を
採ってくればいいだけなのです。
 
 
裏庭で収穫した材料でつくられる
「ホームメイド」な料理のことを、
「無農薬で無害、何より心が元気になるわよ」
と誇らしげに言っていた母。
最後の言葉に、わたしも同感です。