アイリンさんの食卓
「家族に、安全・安心でおいしいごはんを
食べてほしいって思っているんです。」
こう話すのは、バングラデシュ北西部の
タクルガオンに暮らすアイリンさん。
学校の先生であり、大学生とカレッジ生の
二人のお子さんを持つ、4人家族のお母さんです。
食卓にならぶのは、例えば、
小麦粉に水を加えてこねた生地を
薄くのばして焼いたルティ。
ペーストにしたにんじんと
シナモンやカルダモンなどのスパイス、
砂糖からつくられたにんじんのハルワ。
煮詰めた牛乳を加えた
やさしい味のチキンカレーなど。
そのどれもが、アイリンさんによって
手間ひまをかけてつくられています。
いそがしくて料理に十分な時間を
割けない日も、家族と協力して、
思いを込めたごはんを用意するそうです。
そんなアイリンさんの食卓を、
TSUMUGIで紹介していただくことになりました。
隔週日曜更新、編集担当は深谷です。
1968年生まれ。バングラデシュのラジシャヒ大学哲学科修士課程修了。日本における高校のようなカレッジで哲学を教えている。大学時代に知り合った旦那さんと、大学生の息子さん(大学の寮で生活中)、カレッジ生の娘さんの4人家族。
#003(2019/11/03)
その日、娘はカレッジから帰ってくると、
「お母さん、明日の朝ごはんは何かちょっと
変わったものが食べたいな」と言いました。
我が家の朝ごはんの定番は、小麦粉をこねて
薄くのばして焼いたルティというパンなのですが、
娘はこれがあまり好きじゃない。
彼女が好きなのはお米なんです。
「じゃあ、朝ごはんもお米にしてあげれば
いいのに」と思われるかもしれませんが、
そうすると彼女は食べ過ぎて太ってしまう。
それで、朝ごはんくらいはお米以外のものを
食べさせるようにしているのです。
そんな中での娘からのリクエスト。
何をつくろうかと考えて、
ルティではなくルチをつくることにしました。
ルチは、ルティをもっと薄く軽くしたようなもの。
小麦粉にほんのちょっとの砂糖と塩、そしてお湯を
加えてこねた生地を2時間ほど寝かせたら、
まるく薄くのばして油で揚げて出来上がりです。
ルチと一緒に食べたのは
ムルギルコルマというカレー。
ムルギは鶏肉、コルマは甘さを意味します。
ヨーグルトを使うことで甘みが出るんですよ。
スナックみたいな軽い食感の食べ物が好きな娘。
ルチをよろこんで食べてくれました。